Tuesday, March 5, 2019

2019年の中国・政府活動報告を読んで


 2019年の政府活動報告は、かなりの景気悪化が到来することを覚悟し、それにどう備えるかを示したものだといえる。GDP成長率の目標は6.06.5%とされているものの、この数字が示すよりも厳しい状況を想定していることは、都市部失業率を5.5%前後に抑えることが目標になっていることからうかがえる。失業率が5.5%というのは、国有企業の大幅人員削減の影響がまだ残っていた2004年以来の高い水準である。

 景気悪化による就業状況の悪化を食い止めることが今年の最大の政策課題である。そのための主な手段は減税だ。昨年17%から16%に引き下げた付加価値税の税率を、今年はさらに13%にまで下げる。企業の税と社会保険料の負担を総額2兆元も減らす。その分、財政赤字は拡大するが、その一部は地方債の発行で賄う。銀行の融資をなるべく民間中小企業に回すようにしたり、電力料金を引き下げるといった目標も示されている。

 こうして負担の軽減や融資の拡大によって民間中小企業を活性化させ、経済成長の勢いを増して就業を拡大していく、というのが政府活動報告の描くシナリオである。一般に景気対策というと金融緩和や公共投資の拡大といった手段がとられがちだが、中国では過去にそうした対策が債務拡大などリスクの増大を招いてきたことから、なるべくそれらを避け、民間主導経済への転換を進めながら景気を浮揚させようとしている。

 ただ、民間中小企業への融資拡大や負担の軽減といった方針がどれだけ実現するかは未知数である。また、それらが景気拡大といった効果にまでつながっていくかという問題もある。公共投資ほどの速効性は期待できないかもしれない。景気がさらに落ち込んだ時に、政府がどれだけ政府活動報告のシナリオを堅持できるか我慢比べになるであろう。

Tuesday, December 11, 2018

Newsweek日本版コラム

12月10日、Newsweek日本版のコラムで「中国当局がひた隠すスラム街の存在」を書きました。https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2018/12/post-44.php 実は「ひた隠す」というほど隠してはいないのですが、市民からは見えないところにあり、ほとんどの北京市民はそんな街があることを知らないと思います。ネットで探しても5万人が住むとみられるその町に関する情報はどこにも見られません。

東大駒場・全学自由研究ゼミナール

11月30日、東京大学教養学部の全学自由研究ゼミナールで「中国・新興国ネクサス」について講義しました。

Wedgeの取材

11月29日、雑誌「Wedge」の取材があり、米中技術摩擦について私見を述べました。

東洋学園大学・ワンアジア講座

11月29日、東洋学園大学で朱建栄先生が組織したワンアジア講座(テーマは一帯一路)に登壇し、「中国・新興国ネクサス」について講義をしました。

学習院大学・国際社会科学部

11月26日、学習院大学・国際社会科学部の趙萌先生の授業のゲストとして「中国のイノベーション」について講義しました。

中国経済経営学会・秋季大会

11月24日~25日、中国経済経営学会の秋季大会が大東文化大学(板橋キャンパス)で開催されました。私は本大会にて会長の任期を終え、高橋五郎先生が次の会長に就任されました。「毛沢東時代の中国の経済制度と政策:現時点からの評価 (その2)」 というセッションで、「上海に隷属した内陸の軍事工業基地:『小三線建設:口述上海』を読む」というタイトルの報告をしました。