Saturday, May 6, 2017

大越匡洋『北京レポート 腐食する中国経済』日本経済新聞出版社

 大越匡洋「北京レポート 腐食する中国経済」日本経済新聞出版社、2016年8月刊を読んだ。
著名な学者から市井の人々までさまざまな声を拾っていて、日本の新聞記者ならではの真面目な取材ぶりがうかがえる。
 他方で、日本の新聞の中国駐在記者が出す本の典型的パターンを踏襲しているように思う。
 第一に、中国のゆくえに対する総合的判断をする傾向。日本の中国駐在記者が書く本では、中国は成長するのかしないのか、といった大局的判断を下したがる傾向がある。ただ、それが新聞記者に求められている役割なのか、私は疑問を持っている。
 第二に、中国の前途に対する「慎重・悲観」な見方。日本の大新聞の記者で下品な中国崩壊論を書く人は稀だが、楽観的なことを書く人もまずいない。中国の矛盾をいろいろ指摘して、「ただちに崩壊するとはいえないが、このままいくと将来は大変なことになる」みたいに書く。本書は「はじめに」で、自分はハードランディング論には与しない、と宣言しているが、本書を通して中国の矛盾や問題点の話題ばかりで成長可能性を感じさせる話は一つも出てこない。
 思うに、日本の大企業では、中国に対して「慎重・悲観」な見解を述べておくのが一番心地いいのだろう。楽観的なことを言うことも、崩壊するから撤退しろと言うことも、外れたら責任を問われるので、「慎重・悲観」のスタンスで言っておくのが無難である。
 第三に、一つ一つのエピソードが短い。重慶の「地票」の話は本書のなかで私が最も関心を持った話題だが、5ページほどで終わってしまう。無戸籍の人のつらい境遇についてももっと詳しく知りたかったが、3ページで終わってしまう。新聞紙面に載せられる文字数には限りがあるとしても、せっかく本を出すのだから、一つの話題に1章を割いてほしいところだった。

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